# 天導ルリカは生まれるのを止めた

作者：公式配布ページの作者欄を参照（この下書きでは名義表記を省略）

原稿版：1.0／テキスト版：2026-10-27 JST／未公開下書き。
本文と「この本について」を収録。挿絵・巻末資料・あとがきは含みません。

公式配布ページ：https://huggingface.co/datasets/currnya/rurika

本文やキャラデザを AI に渡して、別の展開や挿絵づくりを楽しめます。作ったものを公開するときは、公式配布ページの利用条件と二次創作の手引きをご確認ください。

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# 序　帝都恋綺譚

花の帝都、洋燈の灯る学院で――あなたは、恋をする。

パッケージの表には、金の箔押しで、この一行だけが刷ってある。

裏を返すと、もう一行ある。

湖に沈んだ父の名誉。あの夜を知っているのは、誰？

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『帝都恋綺譚』は、大正浪漫風の帝都を舞台にした恋愛アドベンチャーゲームである。

主人公は小野澪。湖の別荘の番人の娘で、村の小学校で先生の手伝いをしていた。その先生の推薦を受け、名家の子女が通う帝都の学院へ、奨学生として転入してくる。十七歳の春のことだ。父の弥吉は、六年前の夏、別荘の桟橋で起きた事故の責めを負って職を解かれ、その後、病気で亡くなっている。澪の手元には、父が亡くなる前の十日間に書いた一通の遺書がある。

学院の毎日は、恋でできている。放課後に誰と過ごすかを選び、返事を選ぶ。ある場面に辿り着くと、画面いっぱいに一枚絵が出る。一枚絵は画廊に集まり、何度でも見返せる。攻略できる相手は三人。どのルートにも、終盤に告白の場面があり、最後に求婚の場面がある。

そしてどのルートでも、前半の恋の下から、後半になると湖の事件が顔を出す。澪は好きになった人と一緒に、父が責めを負わされた湖の事件の真相を追い、好きになった人は、澪のために自分の家や父親と向き合う。告白の台詞が胸にくるのは、そこまでに二人で事件の重さを運んできたからだ。

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物語の中心にいるのは、天導家である。

帝都でいちばん古い海運の家で、初代は瑠璃丸という一艘の船から身を起こした。家は本家と分家に分かれ、本家の当主が一族と商会を束ねる。

天導家には家憲がある。最初の条にこう書かれている。当主は、初代の血を引く者とする。そして第四条に、嫡出の子は、認知された子に先んずる、とある。ゲームの中で家憲の文面が画面に出る場面は少ないが、湖の事件を解く鍵は、この二つの条にある。

帝都の法律では、人は二十歳で成年になる。天導家には、それとは別に、十八歳の誕生日に一族の前で成年披露を行う習わしがある。本家の血筋の子は、その夜、黒地の着物を着る。

本家の屋敷の奥に、星の間と呼ばれる部屋がある。

壁の一面に星図が、向かいの一面に海図が貼られ、残りの壁を四十三の船舶時計が埋めている。天導の船が一艘退くたびに、その船の時計がこの部屋に掛けられてきた。いちばん古いのは瑠璃丸の時計だ。当主の天導宗一郎が生きていたころ、四十三の時計は少しずつずれて時を刻み、部屋の中は、雨が屋根を叩いているような音で満ちていた。時計を巻くのは、宗一郎の役目だった。

宗一郎が死んでからは、家令が毎朝一台だけを巻く。残りの四十二台は、それぞれ違う時刻で止まっている。ゲームの最後の夜、成年披露が開かれるのは、この部屋である。

湖の別荘は、星見荘という。湖畔に建つ洋館で、岸から桟橋が湖へ延び、そのたもとに舟屋と番人小屋がある。毎年八月、天導の一族はここで盆を過ごし、十五日の夜には、桟橋から灯籠を流す宴を開く。

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攻略対象の三人と、それぞれのルートでいちばん多く語られた場面を、一つずつ紹介する。ゲームは学院での二年間を追う。ここに挙げる一枚絵と告白は、どれも澪が十八歳になってからの、後半の場面である。

天導一臣は、分家の当主・貞光の一人息子で、本家の跡取りである天導瑠璃の婚約者だ。背が高く、無口で、眉がまっすぐな青年。序盤はずっと不愛想で、澪に本を貸しても、感想には「そうか」としか返さない。第四章、澪が風邪で読書会を休んだ日、一臣は寮の門で待っている。用事は本を返してもらうことで、返してもらったあとも帰らない。「用はなくなったが、まだいる」と言う。

一臣は、最後まで澪を「小野」と呼ぶ。それが変わるのは、澪の卒業式の朝だ。学院の並木道で、一臣は手袋を片方だけ外し、素手を差し出す。一枚絵は、差し出された大きな手と、それを見下ろす澪の横顔である。

「澪」

初めて、名前で呼ぶ。

「婚約は、父が決めたことだった。これは、私が決める。本を貸す口実がなくなっても、私の隣にいてくれないか。これから先、ずっと」

澪がその手を取ると、一臣は少しだけ力を入れて握り返し、「手袋越しでは、嫌だった」と言う。

蘆田慎は、天導家の侍医・蘆田医院の院長の息子で、医学校の学生だ。眼鏡をかけ、柔らかい声で話し、白衣のかくしにいつも詩集を入れている。言葉を急がない人で、詩を読むときは行の終わりで必ず一拍おく。澪が「早く続きを」とせかすと、「急ぐと、詩がかわいそうですから」と言う。

慎のルートでいちばん人気があるのは、夕立の帰り道の一枚絵だ。診療所から寮まで、一本の傘に二人で入って歩く。慎は何も言わずに傘を澪のほうへ傾けていて、寮の門に着いたとき、慎の左の肩だけがぐっしょり濡れている。澪が「どうしてそんなにゆっくり歩いたんですか」と訊くと、慎は「急ぐと、あなたが濡れますから」と答える。詩の台詞と同じ形になっていることに、多くのプレイヤーは二周目で気づく。告白は、そのあとの詩の会で来る。いつもの一拍のところで、慎は次の行を読まない。本を閉じて、「これだけは、急いで言います。あなたが好きです」と言う。一拍おかない慎は、あとにも先にもその一回しか出てこない。

早瀬遼は、帝都日報の若い記者だ。癖毛で、日に焼けていて、いつもどこかが動いている。声が大きい。取材のためなら塀を乗り越え、危ないところへ澪を連れていって叱られる。六年前の湖の夜、見習いとして先輩の鞄を持って駐在所にいた。

遼のルートには、南の港町の市場の場面がある。人混みで、遼は澪の手首をつかんで「はぐれるなよ」と言う。人混みを抜けても離さない。澪が「もう、はぐれませんけど」と言うと、遼は前を向いたまま「知ってる」と答えて、手首から手のひらへ握り直す。一枚絵は、つないだ二人の手だけの一枚で、顔は描かれていない。告白の台詞は記者らしい。「記事にできないことが一つある。おれが、きみに惚れてることだ。裏は取れてるから、書かずに言う」。

三人の中で遼だけが、悪役の令嬢・天導瑠璃について、一度だけこう言う。

「あの子だって、誰かの娘だろ」

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ここから先は、TRUEルートの内容に触れる。

六年前の八月十五日、星見荘で灯籠流しの宴が開かれた。

本家当主の天導宗一郎は三十八歳だった。二年前の春に病身の妻・百合子を亡くし、十月には静子という女性との婚礼を控えていた。

宴の途中、分家の娘の瑠璃――当時十歳――の姿が見えなくなった。瑠璃の父の恭介は、その日の夕方、本社からの至急の電報で帝都へ戻っていて、宴にはいなかった。宗一郎は瑠璃を探しに暗い桟橋へ出た。桟橋の先端が折れ、宗一郎は湖に落ちた。遺体は翌朝、杭のあいだで見つかった。瑠璃は舟屋で眠っているところを見つけられた。

事件は事故として処理された。当主が死んだのは、番人の見回りが足りなかったから。公にはそう言われた。番人の小野弥吉は、その年の秋に職を解かれた。瑠璃の父の恭介も、娘を置いて帝都へ帰ったと責められ、九月の親族会で、自分が瑠璃の父であることを否む書類に署名させられて、家を去った。瑠璃は宗一郎の遺志として本家の養女になり、跡取りに定められた。後見人には、瑠璃の伯父である分家当主・貞光がついた。

物語は、その六年後の春に始まる。

慎のルートでは、蘆田医院の処方簿に、瑠璃の母・藤乃が眠り薬を受け取った記録が見つかる。一臣のルートでは、父・貞光が湖の年の七月に親族会の長老たちへ出した、後見の根回しの手紙の下書きが出てくる。遼のルートでは、家を追われた瑠璃の父と、元女中のお絹を探し当て、あの日の証言を得る。三人全員と友人になったとき、三つの証拠が澪のところで一つになり、TRUEルートが開く。

十七歳の冬、瑠璃は澪の動きに気づき、母の家計簿と、三村という弁護士から届いた封書を、暖炉にくべる。画面には、炎の中で頁がめくれる絵が一枚出るだけで、何が書いてあったのかは最後まで明かされない。

十八歳の四月二十日、瑠璃の成年披露の夜。止まった時計に囲まれた星の間で、澪は父の遺書と三つの証拠を一族の前に出す。桟橋の柱に鋸を入れたのは貞光だった。偽の電報で恭介を湖から遠ざけ、瑠璃の迷子を仕組み、宗一郎を桟橋の先へ走らせた。藤乃は兄に命じられて、娘を薬で眠らせ、舟屋に置いた。主犯は伯父で、母は従犯。澪の父の名誉は、ここで回復される。

そして瑠璃は、学院で澪や下級生を虐めたこと、証拠を焼いたことを、一つずつ数え上げられる。跡取りの資格を取り上げられ、婚約を破棄され、海の向こうの修道院へ送られることが決まる。

最後の場面は、屋敷の門の外だ。荷物を一つだけ持った瑠璃の前に、作業着の大柄な男が立っている。男は名乗らずに言う。

「送っていこうか」

「……あなた、誰」

「昔、あなたを抱いていた者だ」

一枚絵には、日に焼けた男の横顔が描かれている。

エンディングの一枚絵で、瑠璃は船の甲板に一人で立っている。背中しか描かれていない。

瑠璃の本当の父親が誰なのか、ゲームは最後まで言わない。プレイヤーのあいだでは、宗一郎の子だろうと言われている。

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天導瑠璃は、このゲームの悪役の令嬢である。

黒い髪を結い上げた、目のきつい少女で、取り巻きを連れて学院の廊下を歩く。転入してきた澪の靴を池へ投げ、下級生の小暮を階段で押す。一臣の婚約者で、本家の跡取りで、誰にも頭を下げない。

ゲームの中で、瑠璃が澪を憎む理由は、数行でしか語られない。

事件の前の年、九つの夏に、瑠璃は星見荘の岸で、番人の娘の澪と一度だけ遊んだことがある。二人で貝殻を拾い、虹色の殻を分けた。一年後、湖の夜が来た。瑠璃は、本家のおじさまが死んだのは番人の見回りが足りなかったからだ、と母に教えられて育つ。六年後、学院で再会した澪は、瑠璃にとって、おじさまを死なせた番人の娘だった。一度遊んだことのある子だったから、なおさら裏切られたように思えたのだろう、と画面の外の多くのプレイヤーが書いた。

発売のあと、いちばん多く語られたのは、どの恋の場面でもなく、門の外の一枚だった。瑠璃は十歳のとき、母に薬を飲まされて、暗い舟屋に置かれた子だった。その母をかばって帳面を焼き、それで全部を失った。ゲームの中で、瑠璃もあの夜の被害者だったと口にする人はいない。遼の一行だけが、少しそこに触れる。

　＊

湖の夏の人々

年齢は、湖の事件の夏（瑠璃十歳）のもの。ゲームの本編は、その六年後から始まる。

　小野澪　十一歳
　　星見荘の番人の娘。このゲームの主人公。日に焼けた健康な子で、木登りと水泳が得意。短めの髪。人をまっすぐに見る。何でも自分で確かめたがる。
　小野弥吉　四十二歳
　　星見荘の番人。澪の父。日に焼けて、首と腕が太い。毎朝、桟橋を見回る。
　天導瑠璃　十歳
　　分家の娘。のちの本家の跡取りで、悪役の令嬢。黒髪を肩で切りそろえ、目の形が母に似てきつい。頬にはまだ丸みがある。本家のおじさまが好きで、星の間に入れてもらえる、ただ一人の子ども。誕生日は四月二十日。
　天導藤乃　三十四歳
　　瑠璃の母。分家の生まれで、初代の血を引かない。細身で背が高く、切れ長の目。華やかな色の着物を好み、いつも香の匂いがする。
　天導恭介　四十一歳
　　瑠璃の父。分家の婿養子で、造船技師。大柄で指が太く、日に焼けている。無精ひげ。低い声で、「わし」「〜とる」と話す。
　天導宗一郎　三十八歳
　　本家の当主。瑠璃の「おじさま」。痩せて背が高く、穏やかな顔。髪には早くから白いものが混じる。時計と船の模型をいじる指先が器用。二年前の春に最初の妻・百合子を病気で亡くし、この年の十月に静子と再婚する予定だった。
　百合子
　　宗一郎の最初の妻。病弱で、子はなかった。瑠璃が八つの春に亡くなった。ゲームの中では名前しか出てこない。
　静子　二十七歳
　　宗一郎の婚約者。背が高く、髪をきっちり結う。荷物は人に持たせず、自分で持つ。
　天導貞光　四十四歳
　　分家の当主。藤乃の兄。一臣の父。瑠璃の後見人になる。恰幅がよく、赤みのある顔。目の形だけが藤乃と同じ。人前で声を荒らげない。
　天導一臣　十六歳
　　貞光の息子。攻略対象。瑠璃の六つ上の従兄で、のちに婚約者。背が高く、無口で、眉がまっすぐ。いつも本を持っている。
　蘆田慎　十五歳
　　侍医・蘆田医院の院長の息子。攻略対象。眼鏡。柔らかい声。詩集を持ち歩く。
　早瀬遼　十八歳
　　帝都日報の見習い。のちに記者。攻略対象。癖毛で日焼けしていて、よく動き、声が大きい。記者の帽子と手帳。
　お絹　二十八歳
　　瑠璃付きの女中。小柄で丸顔。よく笑う。前掛けの紐をきゅっと結ぶ。
　フミ　五十八歳
　　古参の女中。瑠璃が生まれたときから世話をしている。
　三村　五十歳
　　宗一郎の弁護士。依頼人の秘密を守る。
　佐伯　五十五歳
　　本家の家令。家の支払いの帳簿を年ごとに綴じて保管している。
　辰巳　二十八歳
　　貞光の商会の手代。貞光の使いで方々へ出る。

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