S002 休憩が逃げた

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備
922字・約2分
ポンタが工房の丸椅子に小さな車輪を付けた。座面のぐらつきを直すついでに、机から棚まで座ったまま移動できるようにしたのだ。もちろん仕事中は車輪を止める。走り回る椅子では修理にならない。
「もうやっといた!」
完成した椅子を見たナギは、机と茶の置き場所を見比べた。
「仕事中は固定。休憩のときだけ移動。切り替えが一回で済む」
二人の思いつきが、珍しく最初から一致した。ポンタは車輪の留め具を確かめ、ナギは空の椅子を軽く押した。椅子は床を静かに滑り、止まった。出来はよかった。
午後の修理が終わるころ、ポンタはずっと立っていたことに気付いた。届いた椅子を直すために、自分の椅子を台として使っていたからだ。工具を片付け、台にしていた丸椅子を床へ下ろす。
ナギは茶を入れてきた。熱すぎないように少し待ち、机に二つのカップを置く。ポンタはそれを見て、肩を落とした。やっと座れる。
「休憩用に切り替えとくね」
彼は車輪の留め具を外した。
ナギが椅子の背に手を置いた。置いただけのつもりだった。けれど、腰を下ろす前のわずかな押し出しで、椅子は彼女の後ろから横へすうっと移動した。
ナギはまだ立っていたので、尻もちにはならなかった。行き場をなくした両膝だけが、小さく曲がったまま残った。
椅子は壁の手前で止まる。彼女は膝を伸ばし、椅子を見た。
「休憩が逃げた」
ポンタはカップを置いて取りに行った。椅子を押し戻すと、止めるつもりで添えた手に力が入り、また少し遠くへ滑る。今度はポンタが追いかけた。修理中には一歩も動かなくて済んだのに、休憩するためには歩かなければならない。
ナギは机に肘を置いた。椅子を追うポンタの背中が、工房をゆっくり横切る。彼は椅子を捕まえて誇らしく振り向いた。ナギが手を差し出すと、ポンタは渡す前に首をかしげた。
「これ、休憩中も止めた方がいい?」
ナギは一拍置いてうなずいた。
留め具を戻すと、丸椅子は実に素直な普通の椅子になった。ポンタが座り、ナギは隣の固定椅子に腰を下ろす。二人は茶を飲んだ。
「座ったまま移動は?」
「今日は座ったままでいよう」
ポンタは満足げに足を伸ばした。ナギも黙ってカップを持った。足元には、休憩中には絶対に使わない、ぴかぴかの車輪が四つ並んでいた。
感想は番号(S002)を添えて、お問い合わせフォームへ。