S004 静かすぎる呼び鈴

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備
938字・約2分
工房の受付台には、古い呼び鈴があった。少し触れただけで、チン、とよく響く。よく響きすぎて、ナギが考え事をしている日は、鳴るたびに肩が一センチ上がった。
ポンタはそれに気付いていた。昼休み、彼は呼び鈴を借り、台座を直し、中の当たる部分へ柔らかい小片を貼った。響きは小さくなるはずだった。
「今日は静かなやつにしたよ」
ナギは肩を緩めた。
「ありがとう。あの音、案が出かけたときに限って鳴るから」
ポンタはうれしくなり、呼び鈴を念入りに磨いた。表面は新品のようになった。上の丸いボタンも、押すと実に滑らかに戻った。
午後、二人だけで受付の動作を確かめることにした。ナギは少し離れた作業机で設計図を見る。ポンタは客の役をして入口から入り、受付台の呼び鈴を押した。
何も聞こえなかった。
彼はもう一度押した。ボタンは沈み、戻った。指には心地よい感触がある。音だけがない。
ナギは設計図を見ている。肩は上がらない。修理の狙いは、そこだけなら完璧だった。
ポンタは受付台から顔を出した。ナギは気付かない。手を振ると、ようやく目が合った。
「どうだった?」
「静かだった!」
「呼べた?」
ポンタは手を止めた。
ナギはまた設計図へ視線を落とした。二回目の試験をしようということらしい。ポンタは呼び鈴を持ち上げた。受付に置いてあるから聞こえないのかもしれない。作業机まで歩き、ナギのすぐ横で押す。
ナギは黙って彼の指を見た。ボタンが沈む。戻る。彼女の顔のすぐ脇で、それだけが起きた。
「もう一回?」
ポンタは丁寧にうなずき、押した。
ナギも丁寧にうなずいた。聞こえたからではなく、見えたからだった。
「呼び鈴を呼びに来たの?」
彼は呼び鈴を見下ろした。受付の代わりに、受付から人を運んでしまった。
ポンタは小片を外した。今度は当たる場所を避け、台座のがたつきだけを直す。呼び鈴を受付台へ戻して押すと、短く澄んだ音がした。
ナギが顔を上げる。ポンタは同時に手を振ろうとして、途中でやめた。呼び鈴が、ちゃんと代わりをしてくれた。
「これぐらいでいい」
ナギが言った。ポンタは満足してうなずく。
少し考えてから、彼は柔らかい小片を自分の工具箱の蓋へ貼った。今度は、閉めるたびにうるさかった音だけが静かになった。ナギはそれを聞いて、今度こそ肩を緩めた。
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