S006 おかわりの高度

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備
927字・約2分
窓口の昼休み、スミは冷たいお茶の入った小さな水差しを机へ置いた。リヒトのカップは空になっていた。彼はもう少し飲みたかったが、スミは休憩中なのに仕事の予定を整理している。
今、頼むのは邪魔だろうか。自分で注げばいいのかもしれない。ただ、水差しは彼女の肘の向こうにあった。そこへ手を伸ばす前に、やはりひと言あった方がいい。
リヒトは掌を開いた。薄い魔法の輪が現れ、空のカップが持ち上がる。水差しを動かすより、まず自分のカップを見せようと思ったのだ。
スミが顔を上げた。
カップはリヒトの胸の前で、静かに浮いていた。彼は穏やかな笑顔を作った。空であることは、よく見える。
「片付けてくれるの?」
スミが言った。リヒトの笑顔が、申し訳ない形になった。片付けたいのではなく、もう一度使いたい。訂正の言葉を考えるうちに、掌が少し上がる。カップも上がる。
スミは水差しを持った。
「じゃあ、もう少し?」
リヒトはうなずいた。ようやく伝わった。うれしくて肩の力を抜こうとして、逆に肘が上がった。カップは彼の顎の前へ移動した。
スミは水差しを下ろしたまま、空のカップを見た。リヒトもそれを見た。二人の目の高さで、カップだけが上品に待っている。
「飲む場所、そこでいいの?」
彼は首を振った。焦ると、魔法の輪を持つ手がさらに上がった。今度は額の高さになった。スミは水差しを机に戻した。背伸びして注ぐつもりはなかった。
リヒトは自分のカップを見上げた。浮かせる技能に失敗はない。どの高さでもぴたりと止まる。それが、今日は少し困った。
彼は息を吐き、スミの方へ体を向けた。
「おかわり、ください」
言ってしまうと、拍子抜けするほど短かった。肩が下がり、掌も下がる。カップが机へ降りてきた。
スミはその底が机に着くのを待った。
「まず、カップを着席させて」
彼は術を解いた。カップは普通のカップになり、スミが普通にお茶を注いだ。魔法の輪も消える。二人は同じ高さの机で、同じ高さの茶を飲んだ。
リヒトはお礼を言った。スミは自分のカップを少し上げて応えた。その程度の高さなら、魔法はいらない。
窓口の午後の予定は一行も増えていなかった。増えたのはリヒトのお茶だけだった。彼はそれを確かめ、ようやく、空を見上げずにひと口飲んだ。
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