S007 浮いているのは未処理

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備
958字・約2分
スミは窓口を閉める前に、二枚の用紙を並べた。机の左が、これから読むもの。右が、読み終えて印を押したもの。二枚しかないので、今日は早く帰れそうだった。
リヒトは左の紙へ、まだ記入をしていなかった。町の修理道具を借りるための、自分の申込書だ。スミに何をどこまで書けばいいか尋ねたかったが、彼女が帰り支度をしているので、まず用紙を片付けるのを手伝おうと思った。
彼が掌を開くと、左の一枚がふわりと持ち上がった。
「ありがとう、そこへ」
スミは机の右を指した。
リヒトは困った顔になった。そこは、済んだ用紙を置く場所である。自分の用紙は、まだ済んでいない。けれど彼は頼まれた通りに紙を動かした。紙は右の束の上、十センチほどの高さで浮いて止まった。
置いてしまう前に言おう。そう考えたまま、止まっていた。
スミは受付印を持ち上げた。二枚目も片付けてしまえば、戸締まりができる。彼女の手が勢いよく下りかけ、途中で止まる。
紙がまだ浮いている。印を押すには、机へ降ろしてもらわなければならない。
「そこ、押すよ」
リヒトはうなずきかけて、ようやく首を振った。
「まだ、何も書いていません」
スミは紙を見た。向こう側が透けるほど、よく空いている。名前の欄さえ空だった。彼女の受付印は、空欄に許可を与える寸前で宙に止まっていた。
「早かった」
彼女は頬を少し膨らませた。リヒトは紙を左へ戻そうとした。スミがそれを見て、また手を振った。
「待って。今読むから」
彼は紙を右にも左にも動かせず、机の真ん中へ戻した。宙にある一枚を、二人が同じ真剣さで見つめる。何も書いていないことだけは、どの位置からでもよく分かった。
スミは受付印を置き、椅子へ座り直した。
「まず、ひと言。何を借りたい?」
リヒトは答えた。スミは必要な欄を指し、彼は紙を机へ降ろして記入した。魔法で片付けるより、ずっと早く進んだ。
読み終えたスミが印を押した。今度は中身がある。紙も浮いていない。
帰り際、リヒトが右の二枚を持ち上げかけた。スミは手の平を見せて止めた。用紙を一枚ずつ確かめ、うなずく。
「もう浮かせていいよ」
リヒトは笑った。浮かべる前より、許可をもらった今の方が気持ちは軽かった。
机の右には、二枚分の仕事がきちんと済んでいた。スミは受付印をしまう前に、その蓋が本当に閉まっているか、今日は二度見た。
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