S008 許可のいらない傘
AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備
931字・約2分
昼休みが終わったのに、窓口の外はまだ雨だった。リヒトは入口の傘を見た。持ち主はスミである。近くの道具置き場まで行って戻るだけなら、すぐ返せる。でも、本人が使う予定かもしれない。
スミは机の書類を揃えている。リヒトは「お借りしても」と言いかけて、やめた。返す時刻も先に言った方がいいのか。濡れた傘をどう拭くかも約束するべきか。
言葉を考えたまま、彼は魔法の輪を出した。閉じた傘が傘立てからゆっくり上がり、彼の肩の横で浮いた。
スミが顔を上げた。
「傘、使う?」
リヒトは丁寧に笑った。まだ借りると言っていないのに、手の届く所まで持ってきてしまった。これでは借りる前提に見える。彼は首を小さく振り、傘を元の場所へ戻した。
「いえ、その」
雨音が強くなる。やはり借りた方がよさそうだ。傘をもう一度持ち上げようとして、スミを見た。彼女は今度こそ、彼が何をしたいのか分からない顔をした。
リヒトは近くにあった、小さな空の返却トレーを見た。これは自分が管理している備品だから、借りる許可はいらない。濡れても拭けばいい。
トレーがすうっと上がり、彼の頭の上で水平に止まった。肩幅より少し狭い。顔は守れるが、マントの左右は守れない。リヒトは肩を縮めた。すると、トレーの下へきれいに収まった。
スミは書類を置いた。
彼は入口へ一歩近づき、さらに肩を縮めた。窓のガラスに映る自分は、ずいぶん小さな屋根を載せた、ずいぶん遠慮がちな魔法使いだった。
「傘、借りていいですか」
ようやく言うと、スミはすぐにうなずいた。
「うん。屋根より貸しやすい」
彼女は傘を取って、柄を差し出した。リヒトはトレーを机へ降ろし、普通に手で受け取った。肩を広げても、もう大丈夫だった。
入口で傘を開く前に、彼はもう一度スミを見た。返す時刻を言おうとして、長い文が頭に浮かぶ。
スミは先に手を振った。
「戻ったらでいいよ」
彼は短くお礼を言って出た。
しばらくして、リヒトは濡れた傘を持って帰ってきた。傘立てへ戻そうとし、まずスミに「ありがとう」と言った。今度は魔法を使わなかった。
机の上の返却トレーには、戻った道具が収まった。小さな屋根をやめた途端、急に役に立ち始めたように見えた。スミがそれを指して笑うと、リヒトも、今日は肩をすぼめずに笑えた。
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