星猫くるる HOSHINEKO KURURU

S010 椅子だけ昼休み

昼食の机へ椅子を浮かせて並べるリヒトをスミが見る。

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備

933字・約2分

窓口の奥には、昼休みに使える小さな机がある。リヒトは今日はスミをそこへ誘おうと決めていた。誘うだけなら、一文で済む。けれど、自分の弁当を食べる予定があるか、静かに休みたいか、話をする余裕があるか。そういうことまで考えると、一文の前に確かめることが増えた。
彼は先に場所を整えた。机を拭き、カップを二つ置いた。スミの椅子は受付側にある。座る場所が整っていれば、誘いやすいだろう。
掌を開くと、空の椅子がゆっくり床から浮いた。

スミは机の向こうで書類を束ねていた。リヒトが空椅子を動かしているのを見ると、通り道を空けてくれた。
「そこへ並べるの?」
彼はうなずいた。奥の机の前に椅子を降ろす。スミは椅子が二脚になったのを見て、満足そうにうなずく。
「片付いたね」
そして受付へ戻った。

リヒトは机の前で止まった。場所は整った。椅子は二脚、カップは二つ。昼休みまでの時間も来た。足りないものは、一つしかなかった。
彼はスミの方へ向き直る。
「あの」
スミが顔を上げた。リヒトは机を指した。彼女はそこを見て、椅子の間が少し狭いと思ったらしい。
「もう少し離した方が座りやすいかな」
リヒトは椅子を片方だけ浮かせた。横へずらして下ろす。二脚はゆったり並んだ。スミは親指を立て、また受付へ戻ろうとした。
椅子だけが、すっかり昼休みになっていた。

リヒトは掌の輪を消した。もう動かすものはない。机を指す代わりに、スミの顔を見た。
「一緒に食べませんか」
スミの手が書類の上で止まった。彼女はリヒトを見て、二脚の椅子を見て、ようやく笑った。
「人も呼ばないとね」
リヒトは小さく笑い返した。物の配置をどれだけ整えても、人の予定はそこへ入らない。スミは自分の弁当を取り、受付の机を離れた。

二人は奥の机へ座った。リヒトが先に用意したカップを、スミは少し自分の方へ引いた。魔法で正しい位置に置いたつもりでも、人が座ると少し変わる。
彼はそれを見て、うれしそうにうなずいた。
スミが弁当を開ける。リヒトも開ける。準備の時間には何度も浮いた椅子が、今はぴたりと床についていた。
「明日もここ?」
スミが聞いた。
リヒトは思わず掌を開きかけ、閉じた。
「よかったら」
今度は先に言えた。スミがうなずく。翌日の椅子を動かす必要は、まだ何もなかった。

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