S011 傘は勝者のもの

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備 / テーマ創作
969字・約2分
閉店後のカフェで、イトは入口の雨を見ていた。自分の傘は、昼に店の奥へ片付けたまま見つからない。隣の花屋から来たハルは、ちょうど一本持っていた。
「それ、勝負にしない?」
イトは水色のサイコロを出した。大きい目を出した方が傘を持ち、近くの夜食の店まで案内する。持つだけなら、負けた方も一緒に入れる。そう言うと、ただ誘うより急に落ち着いた。
ハルはうなずいた。二人は店内の台で一回ずつ転がした。ハルが勝った。イトはサイコロをしまい、平静な顔で入口へ向かう。
ハルは屋根のある軒先で傘を開いた。イトが右に立つ。彼は彼女の肩が濡れないように、傘を右へ傾けた。
「どうぞ」
イトは傘の中へ一歩入った。雨音が遠くなる。ハルはにこにこしている。しかし、彼の左肩は傘の外へ出ていた。まだ屋根の下だが、このままなら、外へ出た途端に雨が当たる。
イトはその肩を見た。
「勝者が濡れるよ」
ハルも左を見た。確かに、傘では守られていない。彼は傘を少し自分の方へ戻した。するとイトは、それより先に彼の袖を引いて屋根の下へ入れようとした。
ハルの足が寄る。イトの肩も寄る。傘は、もとの真ん中へ戻るだけでよかった。
二人は軒先で、まだ一歩も出ていなかった。傘の位置を直すために近づいたはずなのに、歩き始める前の方が落ち着かなくなっていた。
ハルが傘を持った手を見る。勝者の権利をもらった結果、すぐ隣でイトが手の置き場所を探している。
「じゃあ、いっしょに」
彼が言うと、イトは窓の方を見た。
「最初から、その予定」
ガラスには、二人が同じ傘の中に映っていた。イトはそれを見て、顔だけではなく、耳まで熱くなった。
歩き始めると、ハルはいつもよりゆっくりだった。イトはその歩幅に合わせようとして、彼が自分に合わせていることに気付いた。どちらからも言わない。傘だけは、ちゃんと真ん中にある。
角を曲がる前、ハルが行きたい店を確かめた。イトはうなずく。勝者が選んだはずの行き先なのに、彼は彼女の返事を待っていた。
「負けた方の希望も聞くの?」
「いっしょに行くから」
イトはサイコロの入ったポケットを押さえた。便利なルールが一つずつ役目をなくしていく。
店の灯りが見えた。ハルが傘を少し高くし、イトも顔を上げた。二人の肩は、今度はどちらも濡れていなかった。勝った人だけが得をするための傘は、結局、二人でちょうどよかった。
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