星猫くるる HOSHINEKO KURURU

S012 勝つ前の招待状

黄色いチューリップを持つハルの堅い誘いにイトが笑う。

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備 / テーマ創作

960字・約2分

花屋を閉めたハルが、一本の黄色いチューリップを持ってカフェへ来た。イトは帳面を閉じたところだった。
彼は週末、一緒に散歩へ行こうと言うつもりだった。店の前の通りを歩く。それだけの話なのに、頭の中では、時間、集合場所、雨の場合、相手の都合、と順番に確認事項が増えていった。
イトはその真剣な顔を見て、サイコロを出しかけた。それから別の勝負を思いついた。
「先に笑った方が負け。勝った方が誘っていい」
ハルはうなずいた。二人は片付いた机を挟んで、まっすぐ向かい合った。

イトは口元を引き締めた。こういう勝負には強い。ハルは優しい顔なので、自分が少し眉を上げれば笑いそうだった。
ところが彼は、ますます真剣になった。今なら話を切り出せる。勝った後に困らないように、誘い文句を整えておこうと思ったのだ。
イトは彼の顔を見た。丸みのある眉が、見たことのない角度で寄っている。花を持った片手も、胸の前で直角になっていた。
仕事の相談でも始まりそうだった。

ハルは息を吸った。花を持っていない手を、机の脇へきちんと下ろす。少しお辞儀をし、用意していた言葉を言った。
「週末の同行を希望します」
イトの肩が小さく揺れた。すぐに唇を結んだが、遅かった。もう笑っていた。
ハルは顔を上げた。勝てた、と気付いた顔になり、その次に、自分が何を言ったかに気付いた。
「あ」
イトは片手で口を押さえた。勝負には負けた。けれど、先に大事なものをもらっていた。
「それ、勝つ前に誘ってる」
ハルは花を持った手を下げかけて、止めた。まだ渡してもいない。

「じゃあ、今のは練習」
彼は言った。イトは笑いを引っ込められないまま、首を振った。
「練習の方へ返事していい?」
ハルの眉がほどけた。
彼がうなずくと、イトは「行く」と答えた。一文字ずつ準備しなければならないと思っていた誘いに、二文字で全部が返ってきた。
ハルはようやくチューリップを差し出した。イトは受け取り、机の小さな花瓶へ入れる。

黄色い花が二人の間に立った。イトはまだ勝負に負けた顔をしていなかった。ハルは勝者として言うはずだった台詞を、もう使い切っていた。
「散歩でいい?」
「同行だからね」
イトが真顔で答えると、今度はハルが笑った。彼女も笑った。二回目の勝負なら二人とも負けだったが、一回目の約束だけで、週末の予定はちゃんと決まっていた。

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