星猫くるる HOSHINEKO KURURU

S013 誘う手がない

紙袋を両手に持ったハルが、手が空いていないことに気づく。

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備 / テーマ創作

980字・約2分

買い出しを終えたイトとハルは、カフェの裏口で紙袋を一つずつ持っていた。中身は店で使うタオルと紙ナプキン。どちらも重くはない。
イトは閉店後に甘いものを食べに行きたかった。自分から誘えばいいのに、ハルの袋と自分の袋を見ると、いつもの言葉が先に出た。
「店まで、多く荷物を持った方が勝ち」
「勝ったら?」
「今日の寄り道へ誘っていい」
ハルはその条件を聞いて、すぐに手を出した。

「じゃあ、僕が二つ」
彼はイトの袋も受け取った。一人一つなら同点だったのに、勝負が始まる前から自分の勝ちにしたらしい。
イトは空いた両手を見た。運んでいたものがなくなって、妙にすることがない。ハルは両手に袋を持って、店へ向かって歩き出した。
「ずるくない?」
「持てるから」
彼は軽く答えた。気遣いと勝ちに行く顔が同じなので、イトはどちらに反論すればいいか分からなかった。

裏口の前まで来た。ハルは二つの袋を置かず、勝者らしく彼女へ向き直った。格好よく手を差し出して、寄り道へ誘うつもりだった。
ところが、手が一つも空いていない。
右手を少し上げると袋も上がる。左手を上げても、別の袋が上がる。誘いの仕草になるはずの手には、紙ナプキンの入った袋が、ずっとぶら下がっていた。
イトはその手を見た。
ハルは一度右を下げ、左を少し上げた。今度はタオルの袋だった。

「誘う手、残ってる?」
イトが言うと、ハルは二つの袋を見下ろした。持てることと、持ったまま誘えることは別だった。
彼は袋を床へ置こうとした。イトはその前に片方の持ち手を取った。
「持つよ」
ハルは笑って手を離した。二人はまた、一人一つになった。勝負の前と同じ配置だ。
「これだと引き分け?」
「運び終わるまでが勝負だから」
イトは平静な顔で答えた。ハルの手を空けてしまったことには触れなかった。

カフェへ袋を運び入れる。床へ置くと、二人とも手が空いた。ハルは今度こそ片手を開いて、店の表の方を示した。
「いっしょに、甘いもの食べに行かない?」
イトはその手を見る。荷物を全部持とうとしたときより、ゆっくりした誘い方だった。
彼女はうなずき、入口へ歩いた。ハルが並ぶ。
「引き分けなのに、そっちが誘うの?」
「手が空いたから」
イトは笑い、空いた自分の手をポケットへ入れかけて、やめた。もう運ぶものはない。サイコロを出す必要もなかった。二人は手を空けたまま、いつもより少し近くで歩き始めた。

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