S017 手本の手本

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備
931字・約2分
昼前の工房で、ナギは肩を回していた。長いあいだ机に向かうと、肩より先に眉間が固くなる。今日はポンタが壁の向こうで棚を直していて、休憩の声をかける相手がいない。ナギは両腕をゆっくり横へ伸ばした。
棚の影からポンタが顔を出した。
「新しい体操?」
「あなたの真似」
ナギはあまり考えずに答えた。いつもポンタが作業前に腕を広げるので、肩に良いのだと思っていた。本当は、彼は袖口が机の角に引っかからないか確かめているだけだった。
ポンタは説明しかけたが、ナギの背筋がまっすぐ伸びているのを見て口を閉じた。自分の確認動作を、彼女が体操に改良したのかもしれない。段取りを考えるのが得意な人だ。ならば、完成した方を習いたい。
ポンタも隣に立ち、両腕を横へ伸ばした。ナギが右腕を少し上げる。ポンタも右腕を上げる。ナギが首を傾ける。ポンタも傾ける。どちらも相手の動きを横目で確認したため、一拍ずつ遅れるのが気になった。
「ゆっくりでいいよ」
ポンタが言うと、ナギはうなずいた。先生が速度を指定した、と受け取った。ナギが腕を水平に戻すと、ポンタもうなずいた。先生が基本に戻った、と受け取った。
窓から風が入った。ナギは頬にかかった髪を避けようと右手を頭の横へ上げた。ポンタは新しい段階だと思い、同じ位置へ手を上げた。彼の手がきれいに耳の横へ来たので、ナギは自分の手もそこにそろえた。反対の腕は横へ伸ばしたまま。二人は、何かの出発を見送るような形になった。
ポンタの口が少し開いた。ナギの口も開いた。質問まで体操の一部だと思われそうで、二人とも閉じた。静かな工房で、紺と黄土色の二人が同じ角度を保っている。
先に耐えられなくなったのはポンタだった。
「次、どっち?」
「そっち」
「いや、そっちが」
ナギは伸ばした腕を下ろさずに彼を見た。ポンタも同じ姿勢で彼女を見た。目まで鏡のように合ったところで、ようやく事情がつながった。
「私、あなたから習ってた」
「僕も」
二人は腕を下ろした。肩は少し軽くなっていた。目的だけは達成している。ナギはそれを認め、窓を閉めに行った。ポンタが後ろから一歩ついてくる。彼女が止まると彼も止まった。
ナギは振り向かず、片手をもう一度上げた。
「先生、募集中」
後ろでも、同じ高さに手が上がった。
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