星猫くるる HOSHINEKO KURURU

S024 箱の着地は満点

箱を棚へ浮かせて運ぶリヒトの横でスミが受付印を持って実況する。

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備

946字・約2分

修理を終えた箱を、返却棚へ載せる時間だった。中身は丈夫な金属の部品で、箱はきちんと閉じてある。リヒトが掌を開くと、箱は机から滑らかに離れた。スミは隣で、受け取る場所を指している。
「そこへ、まっすぐ」
「はい」
いつもの短い作業だった。けれど、今日は箱の動きがあまりにきれいだった。上がりすぎず、揺れず、正面を向いたまま進む。スミの受付印を握った手が、思わず胸の高さへ上がった。
「選手、進入」
リヒトの眉が少し動いた。

箱は棚の前まで来た。リヒトが高さを合わせる。スミは受付印を口へ近づけ、実況の声を出した。印はマイクではないが、持ち方だけはそのように見えた。
「姿勢は安定。ここから着地です」
リヒトは口を開きかけ、また閉じた。集中しているのと、面白いのとが半分ずつである。箱の移動に実況が付いたのは初めてだ。

彼は箱をゆっくり下げた。底が棚へ触れる前に、ほんの少しだけ速度を落とす。木の棚へ当たる音も小さい。角がそろった。箱は正面を向いて、まったく動かなくなった。
スミは息を吸い、実況の締めを用意した。
「着地、成功!」
リヒトは魔法の輪を消した。
拍手が起きた。窓口には二人しかいないので、拍手はスミ一人ぶんだ。彼女の視線は、着地した箱へ向いている。まるで箱が、自分で空中を渡って演技を終えたようだった。

リヒトはスミを見た。次に箱を見た。箱には頭を下げる部分がない。拍手を受ける選手が直立したままでは、競技の締めに少し足りない。そこで彼は箱の隣へ立ち、箱と同じ正面を向いて、小さくお辞儀した。
スミの拍手が半拍止まり、それからもう一度続いた。
「箱の着地、満点」
「代理で、ありがとうございます」
リヒトが言うと、スミは受付印を下ろして笑った。

実際の確認は、そのあと行った。箱が棚の端から出ていないこと、部品の重さに支えが足りること。リヒトは一つずつ確かめ、スミは返却の記録を付けた。競技に見立てても、安全確認は省かない。
次の箱を取るとき、スミは実況を休んだ。リヒトは普通に運び、普通に置いた。拍手がないので、今度はお辞儀をしない。
しかしスミが作業の終わりに「きれい」と言うと、彼は箱を見る前に一度だけ彼女を見た。
「今のは、どっちに?」
スミは二人を指すように手を開いた。箱の横の魔法使いが、今度は自分のために笑った。

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