S026 二人で四席

AI が作成 / 人間が未査読 / コンセプト・ターゲット無し / 体裁が未整備 / テーマ創作
985字・約2分
閉店後、イトは入口の小さなテーブルを拭いた。店の中では帳簿、店の外では花の水。いつも二人とも何か持っていて、話し終わるまで立ったままだ。今日は座って話せるようにしようと思った。
椅子を二脚、テーブルの左右へ置く。向かい合うと仕事の打ち合わせに見えるので、少しだけ同じ側へ寄せた。寄せすぎている気がして、また少し離す。
「配置の確認」
誰も聞いていないのに、イトは理由を言った。
ハルも、花屋の入口で椅子を拭いていた。今日は仕入れが早く終わった。イトの仕事が済んだら、少し座って話したい。花屋から持ってくるなら一脚だけでは足りない。自分の分だけ持って行くのは、誘う形として不自然だ。そこで二脚とも準備した。
二人は同じ時刻に、同じテーブルへ来た。イトはカフェ側の二脚の背を持ち、ハルは花屋側の二脚を一脚ずつ横へ運んだ。相手が席を作っていることに気づくまで、二人とも目が椅子に向いていた。
「座ろうと思って」
ハルが言う。
「私も、二人ぶん」
イトは言い終わってから数えた。
テーブルの周囲には、四脚ある。丸い小さなテーブルなのに、急に会議を開ける配置になっていた。参加者は二人のままだ。
イトは椅子を見て、ハルを見た。ハルも椅子を見て、イトを見た。二人とも誘う用意を先にしていた。気づいたあとに撤去すると、どちらが譲ったのかという話になりそうだった。イトは中央に近い椅子へ座り、ハルもその隣へ座った。外側の二脚が、静かに余った。
「来客の予定は?」
イトが聞く。
「ないです」
ハルが少しだけ事務的に答えた。イトの口元が動いた。自分も同じ予定表を持っている。予約を取り直す必要はない。
彼女は空いた椅子へ顔を向け、手のひらで二席を示した。
「貸切、二名」
ハルが笑った。椅子の方が人より多いのに、座った二人の間は狭かった。
しばらく話してから、ハルが外側の一脚へ立てかけた布を畳んだ。イトも余った椅子を片付けようとしたが、座るための準備を二人とも済ませたことが嬉しくて、今日はそのままにした。
「次は一人一脚ね」
「分かった」
ハルはうなずき、隣の椅子へ自分の手を置いた。
「二人が来れば、ちょうどになる」
イトはその言い方を頭の中で一度確認した。一人で席を作り、来るかどうか待つより、ずっと分かりやすい。
帰るとき、二人はそれぞれ自分の椅子を二脚ずつ戻した。行きも帰りも同じ数。ただ、次に使う席だけは、もう決まっていた。
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