S089 最後の一枚

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# 最後の一枚
発明コンクールの応募用紙から、私の名前だけ消されていた。
「手伝った人まで載せたら、きりないから」
部長はそう言った。
作品は、片手で開けられる収納箱だった。
私は放課後に残って、試作品を四十個直した。
発表の日、部長は一人で前に立った。
私は後ろで、予備の箱を並べていた。
審査員が箱を開けた。
「これ、誰が直したんですか」
「うちの部で作りました」
「四十個目の方を呼んでください」
部長が黙った。
審査員はふたの裏を指した。
小さな紙に、日付と変更箇所が書いてある。
試作品を取り違えないよう、私が毎回貼っていた紙だった。
「前の体験会では、母が開けられなかったんです。今日は私が片手で開けられた。何を変えましたか」
私は前へ出た。
「留め具を二ミリ短くしました」
「その二ミリの話を聞かせてください」
部長がマイクを差し出した。
私は初めて、客席の母を見つけた。
母は両手を振っていた。
審査のあと、応募用紙を訂正した。
部長が私の名前を足して、『協力』と書いた。
「一か所だけ、まだ違う」
私はペンを借りた。
『協力』を消して、『共同制作』と書いた。
賞状はまだもらえるか分からない。
その応募用紙は、もう母の待ち受けになっている。
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