天導ルリカは生まれるのを止めた
第二章 行き止まりの三十歩(2/2)
三年のあいだ、一臣は伯父について本家に来る。この帳面がこの家にあるうちは、この家は続く。そう考えた自分に気づいて、懐に入れた手が少し止まった。
止まったまま、私は決めた。三年後に、渡す。澪が来たら、すぐに。
自分の部屋に戻って、鏡台の底の板を外した。帳面をそこへ入れた。板を戻して、白粉の瓶を上に並べた。
文机の抽斗を開けっぱなしにしてきたことに気づいたのは、夕食のあとだった。母が風呂に入っているあいだに居間へ戻って、抽斗を閉めた。切手は一枚だけ取った。礼状は、翌朝出した。
その夜、ノートの新しい頁に、仕入れ帳のように書いた。
十二月三日
入庫 藍の帳面 一冊
置き場 鏡台の底
出庫 小野澪さんが学院に来たら、すぐ
書いておけば、あとで言い訳ができない。祖母の店で、帳面をつけるのはそのためだった。
余白には、何も描かなかった。