07 / 07 · 星見荘に来た日
読まない王子
オウジ・ルリカ・ギャル · 約1分
AI が作成
小野澪は、湖の星見荘の番人だ。毎朝の見回りを手帳に書く。一行だけ書けずにいた。二階の奥の、前は無かった扉。ルリカは毎晩そこへ入っていく。
ある夜、澪は手製の芋ようかんを包んで、その扉を開けた。
知らない居間で、ルリカが台本を配っていた。ギャルが、番人の緑の上着を見上げる。
「背、高っ。王子じゃん」
「ちょうど王子の役が空いておりますの」
断る間もなく紙を持たされた。悪役令嬢のルリカを断罪する場面で、一人称はボクとある。
「ボクは君の罪を読み上げる。一、人の靴を池へ投げた」
澪の声が止まった。
「いつ、誰の靴ですか」
「お芝居ですわ」
確かめもしない罪で、父は番人を追われた。澪は紙を下ろした。
「……それって、おかしくね?」
地声だった。居間が静まる。

「台本に無いですわ!」
叫んだルリカの口の端は、上がっていた。ギャルが手を叩く。
「決まり。今日からオウジね」
「ボクは番人です。小野澪といいます」
言ってから口を押さえた。ボクが抜けていない。
「澪とは呼ばせませんわ。それは私の分ですの」
その夜、オウジは手帳の空いた行を埋めた。「二階の奥の扉、異状なし。芋ようかん、足りず」。次の晩から、包みは二つになった。