CHARACTER
天導藤乃
所属作品:天導ルリカ
娘の顔に布をあて、光の向きを変えて、似合う色を探す母親。天導藤乃は、『天導ルリカは生まれるのを止めた』に登場する、瑠璃の母です。細身で背が高く、娘とよく似た切れ長の目を持ち、華やかな着物と香の匂いが印象に残ります。娘の身支度を整える手つきにも、行儀を言い聞かせる声にも、近くにいる母としての姿が見えます。ただ、瑠璃がその言葉をどう受け取るかは、場面によって違います。布を選ぶ午後や珈琲を淹れるひとときから、母娘の近さと、言葉にしにくい緊張をたどってみてください。
天導家の中で、娘に語る人
藤乃は恭介の妻であり、貞光の妹です。天導家の分家に生まれ、宗一郎とは従兄妹にあたります。娘にとっては、家の大人たちの話を伝える身近な相手。一臣編の第一章では、部屋から出ないことと、伯父の話を行儀よく聞くことを瑠璃に言い渡します。そのあと、鏡台の櫛を取って娘の髪を二度梳き、櫛を置く。短い言葉と身支度の世話が続く場面に、藤乃と娘の日々の関わりが表れています。
「あなたに似合う」と言う午後
零歳転生編の第二章には、藤乃が瑠璃を呉服屋へ連れていく場面があります。藤色に金の入った着物を着た母は、娘の顔映りを見ながら、反物をいくつも退けます。最後に藍と緑がかった青を並べて、どちらが好きかを娘に尋ねます。瑠璃が選んだ色に、藤乃は「あなたは目がいい」と言い、「あなたに似合う。よく似合う」と重ねる。自分の好みを押し通すだけではない、その日の母の応対と、言われた言葉を帰りの馬車で思い返す娘の姿が残ります。
珈琲の挽き方を教える手
同じ第二章で、十二歳の瑠璃は母の居間で珈琲の淹れ方を教わります。粗すぎると薄く、細かすぎると苦い。藤乃は挽いた粉を娘の掌に少し出し、ちょうどよい加減を見せます。娘の珈琲には「薄い」と率直に言いながら、湯の落とし方は上手だと認め、次は豆を増やすよう教えます。宗一郎が置いていった道具について話すときには、声がいつもより低くなる。母が何を教え、どこで黙るのかまで、瑠璃の目を通して読むと、華やかな姿の奥にある思いへも目が向きます。
作品を読む
作品ページの「物語を読む」から、読む入口をご案内します。1.0版のPDFを公開しています。一臣編と零歳転生編では、瑠璃の側から母の言葉や手つきをたどれます。