CHARACTER
天導恭介
所属作品:天導ルリカ
大きな手で娘を抱き上げ、「ほれ、高いぞ」と声をかける父親。天導恭介は、『天導ルリカは生まれるのを止めた』に登場する、瑠璃の父であり藤乃の夫です。大柄な身体と日に焼けた姿、太い指、低い声が印象に残ります。恭介編の初めでは、瑠璃の幼い身体に残った記憶を通して、その温かな手の重さや木屑の匂いが伝わってきます。熱を出した娘の部屋の前に立ち、障子越しに短く呼びかける場面にも、父娘の近さと、すぐには届かない距離が重なります。天導家の大人の一人でありながら、瑠璃にとっては家の名前だけでは語れない相手。物語が複数の編と世界線をたどる中で、恭介編は、娘が父の姿をどう覚え、何を手がかりに思い続けるかに目を向ける入口です。声や手つき、写真に残る表情から、二人の関係を知ってみてください。
抱き上げる手と、仕事へ向かう背中
恭介編の第一章で、瑠璃が思い出す父の手は、大きく、指が太い手です。脇の下にその手が入ると、身体が高く上がり、天井が近くなる。木屑の匂いと低い声も、その記憶に結びついています。本社からの電報で帝都へ向かう夕方には、「行きたくないなあ」と言って娘の頭に手を置きます。仕事へ出る大人の姿と、娘に触れる父の姿が、一つの小さな場面の中で見えてきます。
障子越しに聞こえる短い言葉
熱で寝ている瑠璃の部屋の前に、恭介が戻ってきます。障子には肩の大きな影が映り、少し屈んだ父が「起きとるか」と尋ねます。娘は声を出せず、腕を伸ばそうとしても途中で落ちてしまう。父はしばらくそこにいて、「ようけ寝え」と言い、廊下を離れます。関西寄りの言葉を使う低い声と、返事の届かない間。その短いやり取りを瑠璃の側から読むと、二人の距離が静かに伝わります。
瑠璃の手元に残る父の写真
第二章には、作業着の襟がよれた恭介が、赤ん坊を抱いている写真が出てきます。写真のために作った笑顔はぎこちなく、赤ん坊の左手は父の太い指を握っています。瑠璃はその一枚を手元に置きますが、毎晩眺めるわけではありません。写真を見ることと、父を思い出すことの間にも、ためらいがあるのです。恭介の説明だけでなく、娘が何を残し、どう扱うかを通して、恭介編の父娘関係をたどれます。
作品を読む
作品ページの「物語を読む」から、読む入口をご案内します。1.0版のPDFを公開しています。恭介編では、瑠璃の側から父の姿をたどります。