CHARACTER
お絹
所属作品:天導ルリカ
子どもの足元を直し、父娘の会話に笑う。お絹は、『天導ルリカは生まれるのを止めた』に登場する、天導瑠璃付きの女中です。小柄で丸顔、よく笑い、前掛けの紐をきゅっと結ぶ人。ここでは零歳転生編の、幼い瑠璃の暮らしに寄り添う姿を紹介します。髪を結い、靴を履かせ、家の仕事をしながら、子どもの言葉を聞く。天導家の大人たちを、瑠璃とは違う近さで知っているお絹の人柄は、そんな毎日の手つきや短い返事に表れます。
大きすぎる靴を囲んで
零歳転生編の第十章「もう一度呼んで」では、恭介が娘のために買ってきた靴が大きすぎます。店で足の大きさを伝えるのに、自分の指を広げて測ったという父。お絹は横で吹き出し、「旦那様、お測りになりませんでしたの」と尋ねます。丁寧な言葉のまま、指で測れば父の指の長さになると返すと、瑠璃も笑いすぎて後ろへ倒れます。世話をする相手だけでなく、その父とも言葉を交わせる人。父の不器用さを責めるのでなく、親子と一緒に笑うお絹の姿から、家の中の会話の温かさが伝わります。
お嬢様の博物館
同じ第十章には、左右逆に履いた靴を「あら、あべこべ」と直す場面や、瑠璃の言い間違いに笑う場面があります。茶の間では髪を結い、幼い身体ではまだ難しいことを、すぐそばで手伝います。秋になると、瑠璃が拾って父に見せた物で縁側の棚が埋まり、恭介は二つ目の棚を作ります。お絹はそれを「お嬢様の博物館」と呼びます。子どもが集めた物の並ぶ棚に、少し立派な名前をつける。その一言には、父娘が重ねてきた日々を、そばで見ている人の親しさが感じられます。
洗濯物から知る家族の姿
第十一章「期限」の夏、お絹は洗濯物を干しています。夕立で慌てて取り込み、そのあとで恭介の靴下を干し直すと、「旦那様の靴下は、いつも右だけ穴があきます」と言います。瑠璃の「なんで」に、右足を引きずる歩き方のせいでしょうねえ、と答えます。父の姿を知る手がかりが、仕事の肩書や大きな出来事ではなく、洗濯物にも残っているのです。幼い瑠璃の質問と、お絹が毎日の仕事で気づいたこと。そのやり取りを読むと、子どもの目に映る家族の姿が、身近な大人の言葉によって少しずつ広がっていきます。
作品を読む
作品ページの「物語を読む」から、読む入口をご案内します。1.0版のPDFを公開しています。零歳転生編では、瑠璃のそばで働くお絹の言葉や手つきをたどれます。