CHARACTER
早瀬遼
所属作品:天導ルリカ
日に焼けた顔に、帽子からはみ出す癖のある髪。角の擦れた手帳を持ち、声の大きさで周囲を振り向かせる早瀬遼は、『天導ルリカは生まれるのを止めた』に登場する帝都日報の記者です。湖で起きた出来事を調べ、天導家を離れた人たちにも話を聞きに行きます。賑やかな話しぶりの一方で、答えられないことには「知らない」と言い、相手が自分で話す余地を残す人。ここでは第一編・ミステリー編の学院の門での出会いと、第三編・零歳転生編の一度目の人生にある市場と珈琲店の場面を、別々の歩みとして紹介します。取材のために動く足と、目の前の相手に向ける言葉から、遼の近づきやすさと仕事への思いをたどってみてください。
手帳に残したことを、抱えている
第一編・ミステリー編の第四話「婚約と三つの経路」で、遼は十五歳の瑠璃を学院の門で呼び止めます。湖へ行った当時は社の見習いで、先輩の鞄を持っていたと話す遼。自分の手帳に残した言葉が、翌朝の記事には載らなかったことを覚えています。記事を書いたのも削ったのも自分ではない。それでも「私はその場にいた」と続けるところに、取材に立ち会った人の思いが表れます。瑠璃に話を断られても怒らず、少し笑って名刺を残す。声を落として話す姿と、返事を押し切らない別れ方から、賑やかさだけでは分からない遼の一面が見えてきます。
人混みで、半歩前へ出る
第三編・零歳転生編の一度目の人生、第四章「はんぶんこ」では、十七歳の瑠璃が二十五歳の遼と河岸の市場へ向かいます。「はぐれるなよ」と手首をつかみ、桶や荷車をよけて歩く遼。取材相手が天導の娘を責めると、半歩前へ出て「あの子だって、誰かの娘だろ」と言います。帰り道、手を引いたことを妹の手を引く癖だと説明し、手を離すところも印象的です。瑠璃の胸が熱くなる瞬間と、遼が取材先の子どもとして接する距離が同じ場面にあります。約束した一時間で学院の門へ戻す行動まで追うと、頼もしい歩き方の中にある気遣いが伝わります。
三杯の珈琲と、話す人のための場所
同じ第三編の一度目の人生、第五章「知りません」。珈琲店で瑠璃と澪に会う遼は、肩に雪を乗せたまま、座る前から喋っています。珈琲を三杯とも自分の前に並べ、一杯目は熱いうちに、二杯目は話しながら、三杯目は帰る前に、と説明する。その可笑しさのそばで、澪の質問には分かることと分からないことを分けて答えます。取材した人についても、代わりに書けば「ただの証言者になる」と言い、その人が自分で喋る場所を作りたいと話す。よく喋る記者が、別の人の声を聞いてもらうために動く。その言葉に耳を留めると、手帳を携えて人を訪ねる仕事の意味が見えてきます。
作品を読む
作品ページの「物語を読む」から、読む入口をご案内します。1.0版のPDFを公開しています。第一編・ミステリー編と第三編・零歳転生編の一度目の人生では、それぞれの遼の取材と言葉をたどれます。