CHARACTER
天導宗一郎
所属作品:天導ルリカ
四十三の時計が刻む、少しずつずれた音。その中で袖をまくり、小さな螺子を扱っているのが天導宗一郎です。『天導ルリカは生まれるのを止めた』に登場する天導家本家の当主で、瑠璃が「おじさま」と呼ぶ人。背が高く痩せた身体、早くから白いものが混じる髪と、穏やかな顔が印象に残ります。家を束ねる立場だけでなく、幼い相手に道具を渡す手つきからも、その人柄に触れられます。
本家の当主と、星の間の「おじさま」
天導家は、帝都で古くから海運を営む家。本家の当主である宗一郎は、一族と商会を束ねる立場にいます。瑠璃の母・藤乃とは従兄妹にあたり、瑠璃にとっては本家で会う身近な大人です。屋敷の奥には、星図と海図、船舶時計に囲まれた星の間があります。瑠璃はそこに入れてもらえる子ども。当主としての大きな役目と、子どもがそばで過ごせる時間が、この部屋で重なります。
揃わない音を楽しむ人
ミステリー編の第十話では、梯子の上で時計の裏蓋を開ける宗一郎に会えます。穏やかな顔つきとは対照的に、小さな螺子を外す指は素早く動く。瑠璃が時計の音をきれいだと言うと、宗一郎は「ずれているのがいいんだ」と応じます。全部揃えば、ただの大きな時計の音になるというのです。天導の船が退くたびに掛けられてきた時計を、自分の手で巻く人。それぞれの音の違いを楽しむ言葉が、星の間の響きを読者にも近づけます。
踏み台と真鍮の鍵
同じ場面で、宗一郎は瑠璃に「巻いてみるか」と声をかけます。自分が梯子を下り、部屋の隅から踏み台を持ってくると、一番下の時計が子どもの目の高さになる。渡すのは真鍮の鍵です。「右へ。ゆっくり。止まったら、それ以上回すな」と教え、巻き終えた瑠璃には「上手だ」と言う。器用な人が一人で仕事を済ませるのでなく、相手が手を動かせる高さを整える。その具体的な動作に、おじさまと呼ばれる宗一郎の親しみやすさが表れています。
時計のそばにある帳面
巻き終えた宗一郎は、窓際の机で帳面を開きます。一台ずつ、巻いた日と遅れと進みを、細かく几帳面な字で書き留めるのです。瑠璃はその横に座って見ています。時計を直す速い指先から、日々の記録を残す手へ。短い場面を追うと、道具を扱う器用さに加え、一つずつ状態を確かめる丁寧さも見えてきます。宗一郎を知る入口として、星の間で交わされる言葉と、その合間の手仕事に目を向けてみてください。
作品を読む
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