星猫くるるHOSHINEKO KURURU

天導ルリカは生まれるのを止めた

第七章 婚約解消していません(2/2)

 私は新しい頁に、今日の日付を書いた。

  十二月十八日
   婚約 解消(家)
   婚約 継続(私)
   あと七百三十日

 書いてから、余白に貝の形の焼き菓子を一つ描いた。筋を五本、扇の形に引く。配合が決まった日の印だった。祖母なら、決まったね、と言うところだ。三本目の筋を引いているときに、手が震えているのに気づいた。

 震えは、しばらく止まらなかった。

 母は今夜、どこで眠るのだろう。伯父は。一臣は、帰った家で、父のいない書斎の机を開けるのだろうか。恭介という人は、借り物の背広のまま、どこへ帰ったのだろう。

 私は、それを一つずつ考えて、一つずつ、考えるのをやめた。考えても、明日の仕込みは減らない。

 祖母がよく言っていた。泣くのは、窯の火を落としてからにしな。

 私はノートを閉じて、灯りを消して、それから、少しだけ泣いた。