07 / 10 · 共通の導入 · ひとつの結末まで約2分
二人の残留
AI が作成
相沢リカは二十九歳で、駅前の美容室「輪郭」に勤めていた。初めての客には、鏡を見せる前に必ず聞く。
「今日、ここだけは絶対変えたくないってとこ、ある?」
切る場所を決めるのは、そのあとだった。
店長の芙美は、紙の予約帳をやめない人だった。予定を変えた名前には細い一本線を引き、熱で来られなかった客には、横に小さく「また」と書く。リカはこういう店に、自分の仕事があると思っていた。
三月、隣の市で店を始める知り合いから連絡が来た。席を一つ空けてある。給料は上がり、休みも決まっている。写真を撮る小さな部屋も作るという。客の髪の色だけを撮る仕事を、リカはずっとしてみたかった。
返事の期限は、月末だった。
けれど、リカは見てしまった。芙美の机に開いていた決算の紙。去年より数字が落ちているのに、リカの給料の行だけは変わっていない。腰の悪い日の芙美は、閉店後の床を掃くために何度も立ち止まる。リカが辞めれば、店も、あの予約帳も終わるかもしれない。
芙美の母は、電車で二時間の町に一人で住んでいる。芙美はときどき、その町の名前を言いかけて、やめた。
期限の前の晩。閉店後の店で、芙美がほうきにもたれて息を整えていた。
リカの携帯には、断りの文が打ってある。《今の店をもう少し手伝いたいんだ。誘ってくれてありがと》
送る前に、言うこともできた。
どちらを読みますか
もう一方も、あとで読めます。
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誘いのことを話す(ハッピー)
選ぶと失うかもしれないもの話せば、芙美さんの店を終わらせるかもしれない。
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黙って断る(バッド)
選ぶと失うかもしれないもの撮影の部屋の席は、もう戻らない。