星猫くるる HOSHINEKO KURURU

08 / 10 · 共通の導入 · ひとつの結末まで約2分

結び目をほどく前に

AI が作成

練習後の休憩所で梢と史帆、相沢が話す

小野寺梢の右手首には、日焼けの薄い線がある。走るときに結ぶ、短い紐の跡だ。隣を走る永瀬史帆の左手首にも、同じ幅の白い線がある。

史帆は十代の終わりに視力を失った。初めて伴走した日、梢は「段差」と「右へ」を何度も言い間違えた。史帆は責めなかった。帰りの橋でだけ言った。

「怖かったら、梢が止まっていいから」

悔しくて、梢は次の週までに橋の継ぎ目の位置を覚えた。四年で、二人は言葉の要る場所と、黙って並ぶ場所を決めた。

県の大会に、史帆は出ることにした。知らない道を走るには、伴走者が二人要る。前半を梢、後半を練習会の先輩の相沢が受け持つはずだった。
ひと月前、梢は足を痛めた。普段の練習はできる。けれど長い距離では、後半で足元が乱れる。史帆は一緒に一度走っただけで気づいた。

「前半を相沢さんに頼む。交代のあとなら、梢も走れるかもしれない」

梢を外したいのではない。区間ごとに、速さを保てる人を置こうとしているだけだ。梢にも分かっていた。
それでも、自分の知らない最初の十五キロが、耐えがたかった。

三人で交代を試した日。休憩所で、史帆が息を弾ませて聞いた。

「最初、右へ寄りすぎたかな。梢はどう見えた?」

寄りすぎてはいなかった。初めての相手に合わせて、歩幅を短くしただけだ。そこから上げられることも、梢には分かる。正しいことを一つ言えば、三人で次の練習に入れた。
けれど喉まで上がってきたのは、別の言葉だった。

どちらを読みますか

もう一方も、あとで読めます。

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