星猫くるる HOSHINEKO KURURU

05 / 10 · 共通の導入 · ひとつの結末まで約2分

二人目の証人

AI が作成

居酒屋で婚姻届を前に向き合う遼と修

三十一歳の秋、相馬遼は居酒屋の卓で、友人の婚姻届を見せられた。
安西修とは高校を出てから十年以上、同じ町にいた。遼が転職して三か月で会社を辞めたとき、修は理由を聞くより先に「昼飯は食ったか」と訊いた。そういう相手だった。

相手の梨緒とは、去年の冬に知り合ったばかりだという。籍は二週間後。修は遠くの研究所への応募をやめて、この町の小さな設計事務所に入る。梨緒も、別の会社からの誘いを断ったらしい。二人が互いのために譲ったものの値段を、二人ともまだ知らないように、遼には見えた。

修は、濡れたグラスの輪がつかないように小皿をよけ、用紙を広げた。

「証人、二人要るんだ。ひとりは梨緒のお姉さん。もうひとり、おまえに頼みたくて」

黒いペンが、用紙の横に置かれていた。二人の名前、生年月日、住所。遼の入る欄だけが白い。

証人の署名は、結婚を許可する印ではない。法の上の保証人でもない。それは遼にも分かっていた。
ただ、修が頼んでいるのは事務ではなかった。これから始まる暮らしの入口に、立っていてほしいのだ。
遼はそこで、うまくいくと信じている顔ができなかった。

「まだ、早くないか」

修はペンのふたを閉めなかった。

「それは、俺たちで決めることだよ」

どちらを読みますか

もう一方も、あとで読めます。

  • 名前を書く(ハッピー)

    選ぶと失うかもしれないもの信じきれないまま、友人の暮らしの入口に名前を残すことになる。

  • 欄を断る(バッド)

    選ぶと失うかもしれないもの喧嘩にはならない。その欄には、別の誰かの名前が入る。

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