05 / 10 · 選んだ結末 · バッド
二人目の証人
バッド:欄を断る
「やめろとは言わない。でも、その欄は俺じゃないほうがいい」
修は「分かった」と言った。怒らず、用紙を丁寧に畳んだ。喧嘩にならなくてよかった、と遼は思った。署名しなくても、友人ではいられる。
引っ越しの日、知らない男が靴箱を固定していた。修の事務所の先輩の、佐伯だった。修が佐伯に「書類も助かりました」と言った。残りの欄は、佐伯が書いたのだろう。
その後の写真には、ときどき佐伯が写っていた。台所の棚を作る日も、底板を押さえていた。
五年目、修は離婚した。荷物を運ぶ日、段ボールの番号を何も聞かずに並べたのは、佐伯だった。
「俺が署名してたら、何か変わったかな」
遼が訊くと、修は紙コップを置いた。
「結婚はしたよ。たぶん同じ日に」
帰りの電車で、修から写真が届いた。新しい部屋の空いた壁に、佐伯が測った棚の位置の、鉛筆の印がある。
《こんな感じでいいかな》
遼は《いいと思う》と返した。すぐに礼が来た。その下に、佐伯と話して棚を少し高くすることにした、と続いていた。
明日、修が棚をつけるとき、消すのはあの線だ。遼はそこに新しい印がつくところを見ない。