01 / 10 · 選んだ結末 · ハッピー
十七番の横
ハッピー:自分の朝を話す
俊一は鉛筆を置いた。
「今朝、先に一つ読んでしまいました。縦の三番です。すみません」
澄子は目を丸くして、それから新聞で口元を隠した。
「三番は、私、まだ解けてません」
「では、今日の私の分は無しです」
「最初から負けてますよ」
真紀が、二人目のコーヒーを置いた。
澄子は〈モヤイ〉の升目を指でなぞった。父親は、船が一艘でも「もやい」だと言っていたという。つなぐ相手がいなくても、つなぐ支度をしておく言葉なのだと。
俊一は手帳を出して、その話を書いた。先月の布の名も、書き足した。
帰り際、澄子は紙袋を返さずに言った。
「来週の分も、買ってきてください。折らないほうを」
次の水曜、俊一は十時五十九分に着いた。紙袋は、膝の上で閉じたままにした。
扉が開き、輪ゴムを巻いた鉛筆が卓に置かれた。
折り目のない升目の上に、二本の鉛筆が並んだ。