03 / 10 · 選んだ結末 · ハッピー
新聞の終わり
ハッピー:新聞の十秒を外す
ミアは十秒を消した。
代わりに、焼いたパンの端を撮った。少し硬いところ。文はこう変えた。
《端っこが硬いパンと、濃い珈琲。窓際は、ひとりにしてくれる》
来たのは週に数人だった。ひとりで来て、ひとりで帰る人たち。ミアはレジの横に空き瓶を置き、「屋根」と書いた紙を貼った。休みの日には皿を運んだ。瓶は少しずつ重くなった。
屋根は一度には直らなかった。冬のあいだは窓際の天井にだけ板を当て、春に残りを直した。
水曜の四時は、そのまま残った。
澄は港の倉庫の記事を指して、魚箱は赤と青だったと言った。静江が、運ぶ人の手袋の色を尋ねる。澄が覚えていないと言うと、二人とも笑った。
新聞のいちばん後ろには、日用品の広告があった。
「この鍋、うちのより安い」
澄が言い、静江が値段を二度読んだ。そこが話の終わりだった。
ミアはカウンターで、それを撮らずに聞いていた。